光触媒抗菌・抗ウィルス機能
菌やウィルスによる疾病罹患への心配は、昨今の新型コロナウィルス禍でより顕在化しました。
既に30年近く以前より、抗菌製品は商品化されまたが紛い物の跋扈により市場形成が阻まれました。
こうした歴史に鑑み、光触媒製品では厳格な試験法の制定、JIS化を経て消費者からの信頼を得られることを第一義に検討されてきました。
1.抗菌とは
抗菌とは製品の表面における細菌の増殖を抑制する状態と定義されています。
光触媒抗菌の場合、光照射下での生菌数が8時間以内に暗所の生菌数の1/100以下に減少することで規定されています。
2.殺菌とはどう違う?
殺菌滅菌は薬事法により「微生物を死滅させること」と規定され医学医療分野でのみ使用が許される用語です。
細菌の発生・生育・増殖を抑制する抗菌とは厳密に区分されており、光触媒では用いることが禁じられています。
3.光触媒抗菌のメカニズム
光触媒加工表面に光が当ると光触媒反応により酸化力の高い活性酸素種が生じます。
この活性酸素OHラジカル・O2マイナスは光触媒表面に接触してくる菌の細胞表面を酸化力で分解し細胞面に孔を穿ちます。
この孔から細胞液が滲出し、細胞内組成が壊れ菌は死滅し、増殖することができなくなります。
この状態をもって光触媒抗菌の作用と位置付けられます。
4.光触媒抗ウィルスのメカニズム
①ウィルスとは
ウイルスとは自身がエネルギーを産生することが出来ず、他生物の細胞を宿主として増殖する性質をもつものです。
その構造から大別して、エンベロープ(脂質二重膜)をもつウイルスとエンベロープをもたないウイルスに大きく分類され
エンベロープをもつウイルスの一例としてはインフルエンザウイルス、エンベロープをもたない一例はノロウイルスが挙げられます。
②抗ウィルスメカニズム
光触媒抗ウイルス機能とは、光触媒の表面においてウイルスの活性(感染能)を抑制する状態と定義されています。
光触媒作用により発生した活性酸素種が、ウイルスの外膜(エンベロープあるいはカプシド)を酸化分解することにより、
ウイルスの活性(感染能)を抑制することと説明されます。
ウィルスの増殖メカニズム
エンベロープをもつウィルスとしてインフルエンザウィルスを例にするとエンベロープとその内側のカプシドに包まれた内部にこのウィルスの生存と継代を生成する遺伝子が存在します。またその外殻をヘマグルチニンとノイラミニダーゼというタンパク質が覆っています。
ウィルスは自己で増殖することができないため宿主として細菌などの微生物を宿主としてこれに吸着します。このときに活躍するのがヘマグルチニンです。
光触媒の作用
光触媒はこうしたウィルスの増殖を抑制します。
その作用は光触媒が紫外線励起されることで生ずる活性酸素の分解機能により機能します。
すなわち光触媒の分解力はウィルスを構成する外殻のヘマグルチニン、ノイラミニダーゼを分解し、外殻であるカプシド、エンベロープを壊してウィルス内部に浸透します。
さらに遺伝子を分解しウィルスが継代を複製させません。
また外殻構造の分解にまで至らなかった場合でもヘマグルチニンが分解されて宿主細胞に吸着することができないウィルスは複製を生成して継代をつくれないため、自己の寿命で死滅します。
あるいは宿主細胞上に複製されたウィルスがあったとしてもノイラミニダーゼが壊されているため、これを宿主細胞から放出することができないのです。
こうして光触媒機能はウィルスの増殖を止めることができます。
③光触媒抗ウィルスの特徴
光触媒による酸化分解には、分解対象の選択性がないため、ウイルスの種類にかかわらず効果を発揮することが期待できます。
このため、ウイルスの突然変異の影響もほとんど受けないと考えられています。
エンベロープを持たないウイルスは、一般的に消毒薬等に対する耐性が高いとされていますが、
光触媒はエンベロープの有無に関わらず抗ウイルス効果を発現することが確認されています。
5.光触媒抗菌抗ウィルスの使い方
光触媒による抗菌抗ウイルス作用は、光触媒の表面のみで起こります。気中に浮遊する菌やウイルスへの効果は、
気中から光触媒表面に直接、接触した菌、ウイルスについては不活化作用を期待できるのですが、
あくまでも光触媒の表面で発現するものであり、空間への直接の効果を示すものではないことをきちんと説明する必要があります。